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【 ナッツボトル・30種類の木の実の標本 】

「ナッツボトル・30種類の木の実の標本(Ver.3)」の答え合わせページです(全3ページ)。

発見できる難易度を5段階でランク付けしてあります。
関東近辺で公園などで発見できる難易度を簡単なものから1、2、3、4、5としてあります。
お子様やお友達とご一緒に、是非挑戦してみて下さい。
想像以上にたくさんの種類の木の実が発見できますよ。

※植物名や学名などは、可能な限り同定(植物の特定)をしていますが、
これが絶対的に正確とは言えません。
その旨、ご了承のうえで、ご参考にして下さい。

■ Natural Gallery shop
ナッツボトル・30種類の木の実の標本(Ver.3)


クチナシ
※ Natural Gallery All rights reserved.
【クチナシの実】
 
No.21 (難易度:2
 

名称:クチナシ
別名/俗称/和名:梔子、巵子、支子、山梔子、センプク、ガーデニア
英語:Common gardenia
学名:Gardenia jasminoides
分類:アカネ科 クチナシ属  
産地/分布:日本の本州静岡県以西、四国、九州、西南諸島や、台湾、中国、インドシナなどに広く分布

暖かい気候を好み、日本では、海岸近くの山野に多く自生する常緑低木ですが、園芸種も多くあり、公園樹や庭木、垣根などとしてよく植栽されており、都内でもよく見かけます。
梅雨から初夏にかけて、甘いいい香りが漂ってくると、近くに純白のクチナシの花が咲いている、ということがよくあるものです。ただし花は痛みやすく、すぐに黄色く変色してしまうので純白の姿は貴重です。

クチナシという名前の由来には様々な説があります。
果実が熟しても裂けたり、破けたりしないので口が無いということで「口無し」、、
果実の萼片(がくへん)をクチバシ、果実自体を梨に見立てた口のある梨「口梨」、「嘴梨」という説、、
蛇が食べる梨という「蛇梨(クチナワナシ)」という説などですが、、
「口無し」という説がもっとも一般的なようです。

果実は、熟すと鮮やかなオレンジ色になります。
先のすぼまった楕円形で、上部には細く長い萼片(がくへん)が残ります。基本は一重咲き(花びらが重なり合っていない状態)の花で、八重咲きの品種には果実は出来ないということです。
果実にはサフランと同じクロシン(Crocin)という成分が含まれ、黄色の着色料となり、乾燥させたものを煮出して、栗きんとんやたくわんなどの食品を着色するのに使いますが、わりと高級な食品といえます。また、消炎や鎮静、解熱などの薬効があり、中国では古くから「山梔子」と呼ばれ、漢方薬としても使われてきました。冠のような黄緑の萼片(がくへん)とのコントラストも効いていて、独特の形が味わいのある木の実です。


シダローズ
※ Natural Gallery All rights reserved.
【シダローズ】
 
No.22 (難易度:2
 

名称:ヒマラヤスギ
別名/俗称:ヒマラヤシーダー、デオドラモミ、インドスギ、シダローズ
英語:Himalayan Cedar 
学名:Cedrus deodara
分類:マツ科 ヒマラヤスギ属 
原産/分布:ヒマラヤ北西部、アフガニスタン東部の高地原産(明治初期渡来)

ヒマラヤ北西部、アフガニスタン東部の高地原産の常緑針葉高木。
日本には明治初期頃に渡来したとされ、樹高は20〜30mですが、原産地ではさらに大きく50mにもなるということです。まっすぐに伸びた幹から、枝は水平に広がり、見事な広円錐形の樹冠をなします。その美しさから世界三大庭園樹(美樹)とされ、庭園や公園、学校など様々なところに植えられています。

学名にある「deodara」とは、神々の木という意味。また、この木を聖なる樹木として崇拝するというヒンドゥー教の神話には、賢者の住む森などとしてヒマラヤスギの森が登場するそうです。

果実は長さ6〜13cmほどの卵形の球果で、枝の上にぽこぽこと乗っかるように上向きになっていて、少し離れて見上げると意外とすぐに見つけられます。熟して球果(松かさ)が開いてくると、芯は枝についたまま、種子が一枚ずつ飛んでいき、鱗片(りんぺん)もパラパラと散ってしまうのですが、多くが先端部分だけがかたまって自然落下してきます。薄い鱗片(りんぺん)がひらひらとした花びらのように綺麗に重なりあい、それがまるでバラの花のように見えるのでシダローズといわれています。


クロマツ
※ Natural Gallery All rights reserved.
【クロマツ】
 
No.23 (難易度:1
 

名称:クロマツ(黒松)
別名/俗称:オマツ(雄松)、オトコマツ(男松)
英語:Japanese black pine
学名:Pinus thunbergii
分類:マツ科 マツ属
原産/分布:日本の本州、四国、九州と朝鮮南部に自生

日本で松ぼっくりといえば、このクロマツとアカマツです。
日本の本州、四国、九州、沖縄と朝鮮南部に自生する常緑針葉樹で、もともと海岸に多く、潮風に強いため、海岸沿いの防風・防砂林、防潮林としてよく植栽されています。アカマツとともに日本で最も代表的で身近なマツ。北海道の海岸沿いなどにも植栽され、一部では自生化しているようです。

樹高25mほどとされますが、植林され管理されていると40m以上になることもあり、かつては60mを超えて、国の天然記念物にしていされていた個体もあったそうですが、残念ながら現存はしていないようです。灰褐色の樹皮は分厚く、亀甲状に深い裂け目が入りやがて剥がれ落ちます。樹皮が赤味の強いアカマツと比べて、明らかに黒いことがクロマツという名前の由来です。
針葉は、長さ5〜15cmほどで、2本が束になってつく二葉松類の一種。アカマツも同じ二葉松類ですが、クロマツの方が葉の幅が1.5〜2mmほどと、太く硬く枝振りや幹も太くしっかりとしていることから、別名「雄松」と呼ばれ、対してアカマツは「雌松」と呼ばれます。

花は、一つの株に単性花の雄花と雌花がつく雌雄異花(しゆういか)で、4〜5月頃に咲きます。
冬芽が白っぽい鱗片に覆われているのもアカマツとの違いです。
球果(松ぼっくり)は長さ4〜7 cmの卵形の松かさで、翌年の秋に熟して鱗片が開き、種子が散布されます。種子は5〜6mmと小さく、翼がついていて全体で2〜2.5cm前後です。種子が落ちた後も、松かさは長く枝に残ります。アイグロマツやアイアカマツと呼ばれるクロマツとアカマツの雑種もあり、判別しにくいものもあるようです。


アカマツ
※ Natural Gallery All rights reserved.
【アカマツ】
 
No.24 (難易度:1
 

名称:アカマツ(赤松)
別名/俗称:メマツ(雌松)、オンナマツ(女松)
英語:Japanese Red Pine
学名:Pinus densiflora Sieb. & Zucc.
分類:マツ科 マツ属
原産/分布:日本の本州、四国、九州と朝鮮半島・中国東北部などに自生

日本で松ぼっくりといえば、このアカマツとクロマツです。
日本では本州、四国、九州と朝鮮半島、中国東北部などに自生するマツ科マツ属の常緑針葉樹で、樹高は30m前後になるといいます。
クロマツが海岸沿いなどに多く生育しているのに比べ、アカマツは内陸に多く、クロマツよりは耐寒性があるため、ブナ林(冷温帯)より下の山地まで生育します。北海道にも植林され、北海道南西部などで自生化してマツ林をつくっいるものもあります。乾燥した尾根や岩場など痩せ地にも生育する一方で、湿地でも対応できます。日当りの良い場所を好む「陽樹」で、裸地や荒れ地に初期の段階で生えるパイオニア植物(先駆植物)と呼ばれる樹木のひとつです。

赤味の強い樹皮は、名前の由来にもなっており、クロマツと同じく亀甲状に裂け目が入りますが、クロマツよりも薄く剥がれます。大木では、幹の根元の方は赤味が弱く樹皮が分厚くなりますが、上の方は赤味が強くなります。
針葉は、長さ5〜12cmほどで、2本が束になってつく二葉松類の一種です。葉の幅は0.7〜1.2mmほどで、クロマツよりも細く柔らかいので、葉先に触れてもクロマツほど痛くありません。アカマツは葉や枝振りのしなやかさから、別名「雌松」や「女松」と呼ばれ、それに対してクロマツは「雄松」「男松」と呼ばれます。
花は、一つの株に単性花の雄花と雌花がつき、4〜5月頃に咲きますが、池の水面などが黄色くなるほど大量の花粉を出すそうです。
冬芽が松脂(マツヤニ)に覆われて鱗片が赤褐色な点もクロマツとの違いです。
球果(松ぼっくり)は、一般的にクロマツよりも小さく長さ3〜5cmの卵形の松かさで、翌年の秋から冬に熟して鱗片が開き、種子が散布されます。種子も4〜5mmと小さく、翼がついていて全体でも1.5〜2cm前後です。種子が落ちた後も、松かさは長く枝に残ります。

松脂が多く、枝の切り口などにたくさん滲み出ます。材の火付きもよいため、現在でも薪や松明として利用されています。京都の「大文字」に代表される「五山送り火」で焚かれるのも、アカマツの薪だそうです。葉や松脂、また伐採された後の根に寄生する塊状の菌(「茯苓(ぶくりょう)」)は、それぞれ薬効があり生薬として薬用に利用されます。

アカマツ林には、高級食材である松茸が生えるのは有名です。松茸は地面に陽が当たるよう、落ち葉や枯れ枝などをこまめにとるなど林をよく手入れされていないと生えないのですが、アカマツも(陽樹の特性からか)松茸の生えるような環境での方が寿命が長くなるそうです。最近では、マツノザイセンチュウによる被害(マツ材線虫病)によって個体数が減少し、問題になっています。


マテバシイ
※ Natural Gallery All rights reserved.
【マテバシイ】
 
No.25 (難易度:1
 

名称:マテバシイ
別名/俗称:全手葉椎、馬刀葉椎、サツマジイ、トウジイ、マタジイ、マテガシ、マデバガシ
英語:Japanese false oak、Japanese stone oak
学名:Lithocarpus edulis
分類:ブナ科 マテバシイ属
原産/分布:関東以西の本州、四国、九州、沖縄に分布する日本固有種。もともとの自生地は九州から沖縄のみとされる

関東以西の本州、四国、九州、沖縄に分布する日本固有種で、もともとの自生地は九州から沖縄のみとされています。
マテバシイ属は世界では100種以上あるそうですが、日本に自生するのはマテバシイとシリブカガシの2種で、世界の中で最も北に分布するのがこの2種。

樹高10〜15mほどになる常緑高木で、枝先に分厚い葉がたくさん集まって繁り、木が丈夫なため、防風・防火林や緑化樹、街路樹、公園樹などとして各地に多く植栽されています。東京でも、コナラなどと並んで、とてもよく目にするドングリの木のひとつです。
葉は、全縁で長さ8〜20cm前後、幅3〜8cm前後で、先端が短く尖った倒卵形をしています。しっかりとした厚みがあり、表面は濃い緑色で光沢があり、裏側は薄緑〜薄茶に見えます。
花は1つの株に雄花と雌花をつける雌雄同株(雌雄異花)。ブナ科の多くが風によって花粉を飛ばして受粉する風媒花で、その花は下向きにぶら下がりますが、マテバシイ属では昆虫を介して受粉する虫媒花で、花は穂状の雄花序と雌花序が上向きにつくという特徴があります。
果実は堅果で、受粉した翌年の秋に熟す2年成で、長さ2〜3cmほどの楕円形で、明るい茶色をしていて表面がうっすら白くなっています。帽子の部分である殼斗(かくと)は浅めのお椀型で、うろこ状の模様があります。へそと呼ばれる実の底の部分(殼斗と接しているところ)が、一段凹んでいるのがマテバシイの特徴でもあります。どんぐりは個体差が大きく、太めのものから細長いものまでいろいろあって面白いです。

マテバシイの実は食用にでき、どんぐりの中でもタンニンが少なく食べやすい方で、アク抜きしなくても食用できるそうです。炒って食べたり、粉状にしてクッキーにしたりして食べられます。粉状にしたものはどんぐり粉として販売もされているようです。九州(長崎)の一部の地域ではマテバシイの実で焼酎をつくるところもあるそうです。その昔は、戦時中や飢饉などのときの救荒食とされていたり、縄文時代の遺跡からも食べられていた痕跡とともに出土されています。古代の日本人には重要な食料になっていたようです。

名前の由来は諸説あります。待てば椎(スダジイ)のように美味しくなるから「待てば椎」、葉が二枚貝のマテ貝(馬刀貝)やその語源でもある古代中国の刀、馬刀(まて)に似ているから「馬刀葉椎」、手のひらのように生える葉の様子から「全手葉椎」などです。学名の種小名の「edulis」は、ラテン語で「食べられる」という意味だそうです。


スダジイ
※ Natural Gallery All rights reserved.
【スダジイ】
 
No.26 (難易度:2
 

名称:スダジイ
別名/俗称:イタジイ、ナガジイ、シイノキ
英語:
学名:Castanopsis sieboldii(synonyms:C.cuspidata var. sieboldii)
分類:ブナ科 シイノキ属
原産/分布:日本の本州(福島県と新潟県以南)、四国、九州、沖縄と韓国の済州島などに分布

日本の本州(福島県と新潟県以南)、四国、九州、沖縄と韓国の済州島などの暖地に分布する常緑高木。各地で公園樹や街路樹などとしてよく植栽されています。
樹高20〜30m、幹は直径は1〜3mにもなり、寿命が長く立派な巨木になります。大木の樹皮は縦に割れ目がたくさん入り、その太い幹からのびのびと伸びた枝に、葉がこんもりと繁って球状の樹冠をつくります。大木は、独特の雰囲気があります。一般的に椎の木というとこのスダジイのことを言うことが多いようです。

葉は、硬い質の5〜15cmほどと小さめの広楕円形で先端は尖り、縁は上半分だけに波状の鋸歯があるか、鋸歯がほぼないものもあります。葉の表面は濃い緑色、裏側は薄茶色の毛が密生して少し光沢感があるのが特徴。
花は、1つの株に雄花と雌花をつける雌雄同株(雌雄異花)で、5〜6月頃に白〜淡い黄色の花を咲かせます。ブナ科では少数派の虫媒花で、雄花から独特の強い香りを放ち虫を引き寄せます。10cm前後の穂状(尾状)の雄花序は上向きにたくさんつき放射状に広がって先端の方が垂れ下がります。8cm前後の雌花もは上向きにつきます。

果実は堅果で、1.2〜2cmほどと小さめの三角錘型で、色が深い茶色のどんぐりで、受粉の翌年の秋に熟す2年成です。どんぐり全体が殼斗に覆われているのが特徴で、熟すと殼斗が先端から3〜4裂にめくれて実が落ちます。このような殼斗をもつのは、よく似た種のツブラジイとこのスダジイのみです。ツブラジイはころんとして丸みがあり、スダジイは細長いことで区別されますが、個体差があるため、スダジイでも丸みのあるものもあり判別が難しい場合もあります。殼斗はほかのドングリのものに比べると柔らかく、内側はビロード状に毛が生えています。

スダジイの実はタンニンがなく、日本に自生するどんぐりの中で最もアクが少ないどんぐりの一つのなので、生食もでき、炒ってたべたりすると美味しいそうです。殻が薄く手でも割ることもできます。奄美大島以南に自生するスダジイは亜種「オキナワジイ」(ssp. lutchuensis)とする場合があり、沖縄の亜熱帯性照葉樹林の森などで主要な樹木となっていて、この大木は板根を形成します。現地では「イタジイ」と呼ばれることが多いようです。


コナラ
※ Natural Gallery All rights reserved.
【コナラ】
 
No.27 (難易度:1
 

名称:コナラ
別名/俗称:小楢、ハハソ、ホウソ
英語:
学名:Quercus serrata
分類:ブナ科 コナラ属
原産/分布:日本の北海道、本州、四国、九州と朝鮮半島、中国に分布

日本の北海道、本州、四国、九州と朝鮮半島、中国に分布する落葉広葉樹。
樹高20〜25mほどになる高木で、根の発達がよく太く深く伸びるため、台風などでも倒壊しずらい樹木といえます。
樹皮は成木になるにつれ縦に不規則な裂け目ができます。伐採されても切り株から新芽(ひこばえ)を出して再生する能力が強く、薪炭材のための主要樹種だったそうです。
葉は、長さ5〜15cmほど、大きいものは20cmくらいの倒卵形で、縁にギザギザがある、独特の形をしています。葉が、ナラの仲間の中では小さいため、コナラという名前がついているそうです。秋には、黄色〜赤褐色に黄葉し、冬の間長く枝に残ってからその後、落葉します。

花は、雌雄同株(雌雄異花)で、4〜5月頃、若葉が展開するのと一緒に咲きます。雄花は黄褐色の小さな花を多数つけた、長さ6〜9cmほどの穂状(尾状)の雄花序が何本も垂れ下がります。風媒花ですが、花粉はそれほど多く飛散させないということです。材木は、薪炭材や椎茸栽培の原木、器具・家具材などに利用されます。

コナラの葉には、コナライクビチョッキリ、ミヤマイクビチョッキリ、マルムネチョッキリなど、チョッキリというかわいい名前の昆虫がみられます。これらは春〜初夏に若葉の一部を切って上手にクルクルと巻き、揺籃を作って中に1〜3個の卵を産みつけます。種によって切り方や包み方に特徴があり、揺籃は簡単には崩れないようにそれぞれ工夫がなされています。


ヒノキ
※ Natural Gallery All rights reserved.
【ヒノキ】
 
No.28 (難易度:1
 

名称:ヒノキ
別名/俗称:檜、桧、真木
英語:Japanese cypress、Hinoki cypress
学名:Chamaecyparis obtusa
分類:ヒノキ科 ヒノキ属
原産/分布:福島県以南の本州、四国、九州、屋久島まで分布する日本固有種

福島県以南の本州、四国、九州、屋久島まで分布する日本固有種で、変種が台湾にも分布しています。
スギとともに日本人にとってとても身近な樹木であり、重要な植林樹種です。尾根や岩場など乾燥した土地を好み、山地に自生しますが、現在ではその多くが植林されたものだと思われます。通常、樹高20〜30mほどの常緑針葉樹で、大きいものは樹高50mほど、幹の直径が約2.5mにも達するそうです。

まっすぐに空に向かって伸びる幹の樹皮は赤味が強く、縦に裂けるように薄く剥がれ、独特の樹皮をしています。
葉はよく見ると鱗状に枝に密着しているもので、4月頃その枝先に1つずつ、2〜3mmの紫褐色の小さな雄花をつけ、花粉を飛散させます。雌花は黄褐色ですでに実のような球形をしていて、直径3〜5mmほどでたくさんつけます。球果は、直径8〜12mmほどで、はじめは緑色で秋冬にかけて熟していき、綺麗な赤褐色になり、鱗片が開いて約2〜3mmの小さな種子を出します。種子には小さな翼がついています。

木目が通って美しい光沢が出る材は、耐久性や耐水性に優れ、香りもよいため、高級建築材として有名。古来より神社仏閣などに使われており、日本書紀には「スギとクスノキは舟に、ヒノキは宮殿に、マキは棺に使いなさい。」という記述があるそうです。現存する世界最古の木造建築であり、世界文化遺産にも指定されている法隆寺の西院伽藍もヒノキで作られており、1300年以上経った現在も維持されています。奈良時代からは仏像にも多く使われました。また、樹皮も腐朽しずらく、伝統的な桧皮葺(ひわだぶき)という屋根に利用されてきました。
ヒノキには特有のすーっとした清涼感のある芳香があります。またフィトンチッドという成分を含み、気分を落ち着かせたりや殺菌殺虫効果があるとわかっています。そのようなヒノキの香りや特性を生かして、桧風呂やまな板など様々なものが作られたり、幹や葉から採れる精油はアロマオイルや香料の原料や、薬用にも利用されています。

ヒノキという名前の由来は、神事などでこの木をこすって火をおこしたことに由来して「火の木」とする説や、神宮の建築材に使われることから「霊(ひ)の木」としたり、最高のものを表し太陽を意味する「日」という字を使った「日の木」を由来とする説などがあります。


スギの実
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【スギの実】
 
No.29 (難易度:2
 

名称:スギ(杉)
別名/俗称:椙(国字)オモテスギ
英語:Japanese cedar
学名:Cryptomeria japonica
分類:ヒノキ科(スギ科) スギ属 
原産/分布:本州全土から四国、九州、屋久島まで自生し、北海道にも広く植林植林されている日本固有種で、中国南部にも分布

本州全土から四国、九州、屋久島まで自生し、北海道にも広く植林されている日本固有種であり、1属1種の常緑針葉樹。
一部、中国南部にも分布が見られ、近年、この自生種を別種とする考えもあり、そうすると1種2属になる。
ヒノキとともに日本人にとってとても身近な樹木であり重要な植林樹種で、ヒノキよりも水分を好むため、適潤〜湿潤な沢沿いなどに植えられることが多く、ヒノキと植え分けられています。吉野杉、天竜杉、屋久杉をはじめ、地域ごとに多くの品種があります。

樹高は通常20〜40m、大きいものは樹高50m、幹の直径2mに達するものもあるといいます。通常、幹は細くまっすぐに上に伸び、樹皮は褐色で縦に長く裂け、剥げ落ちます。ヒノキほど赤味はなく、厚みは厚めです。スギは常緑樹ですが、冬には赤褐色に紅葉することもあるようです。しかし落葉はせず、春になるとまた緑色に戻るということです。
花は雄花と雌花があります。雄花は長さ5〜8mmほどの楕円形で、枝先にたわわにつき、2〜4月頃に開花すると大量の花粉を飛散させます。スギの花粉はとても小さく軽い方で、風に乗って遠くまでたくさん運ばれるそうです。雌花は、直径2cm前後で、枝先に1つずつつき、とげとげしています。球果は直径2cm前後の球形で、とげとげの果鱗がたくさんあり、秋に褐色に熟すと開いて、小さな種子を出します。種子には狭い翼がついているようです。

まっすぐに伸びるスギは材木としても優れており、古来より重要な木材として柱材などの建築材や家具材、曲物などに利用されたり、防水性にすぐれるので樽、桶、船などにされたり、身の回りの多くのものに使われています。また、樹皮はヒノキのように桧皮葺(ひわだぶき)の屋根にしたり、乾燥した葉は焚いて蚊遣りにしたり粉砕して線香にしていました。
雪の多い地方では、大根などを雪の下に埋めて冬場のために保存する習慣がありますが、その雪中保存の際に、生の杉の葉で野菜を覆ってねずみよけに使います。
さらに日本酒にも関わりが深く、日本酒を造るのに、杉樽を使ってスギの香りをつけたり、造り酒屋や酒蔵の軒先に杉玉を飾る習慣があります。杉玉とは、酒林(さかばやし)とも呼ばれ、スギの葉を束ねて大きな球状にしたもので、年に一度、新酒ができる頃に、葉がまだ緑色の新しい杉玉を吊るし、新酒の出来上がりを知らせると同時に、時間とともに葉が茶色くなっていく様子は、お酒の熟成具合もあらわすというものです。この習慣は今でも見られます。このように古くから、日本人の暮らしに深くかかわっており、欠かせない樹木といえます。

環境によっては太く大木になり、屋久島の縄文杉は推定樹齢2000〜7200年、大王杉は推定樹齢3200年といわれ、胸高周囲はそれぞれ16.4mと11.1mとなっています。近年では、林業の衰退によって人の手が入らなくなった過密すぎるスギの人工林が問題になっており、上空から見ると緑に見えるが、その林床に他の植物が育たない現象が起きています。そのことを「緑の砂漠」などといわれます。名前の由来は、真っ直ぐの木から「直木」(すぐき)からきているという説(大和本草)と、上へ進み上る木として「進木(ススギ)」が語源という説(本居宣長)などがあります。


お茶の実
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【お茶の実】
 
No.30 (難易度:2
 

名称:チャノキ(茶の木)
別名/俗称:茶樹、茶
英語:tea plant
学名:Camellia sinensis
分類:ツバキ科 ツバキ属
原産/分布:中国南西部原産とされ、日本各地で栽培され、一部は山林などで野生化

中国南西部原産とされ、日本各地で栽培され、一部は野生化している常緑低木。
日本人とは切っても切れないお茶。緑茶のための栽培だけでなく、公園樹や庭園樹、生け垣や街路樹としてもよく植栽されています。日本にチャノキが紹介されたのは奈良時代といわれ、当時は薬用として飲用されていて、まだまだ貴重なものだったと思われます。その後、鎌倉時代に種子と茶葉の作り方や飲み方を、中国に留学していた僧が持ち帰ってから、チャノキの栽培が広まり、お茶の文化が僧、武士、庶民へとだんだんと広がっていったということです。

日本で栽培されているチャノキは、中国南西部原産とされ、高さは2〜3mほどにしかならない低木である中国種(C. sinensis 基本変種)とされ、同じチャノキでもインドのアッサム地方で発見され、インドやスリランカで栽培が盛んな変種のアッサム種(C. sinensis var. assamica)は10mを超える高木になります。
中国種のチャノキは、アッサム種よりも葉が小さめで丸みがあります。葉は、光沢があり縁には細かなギザギザがあります。栽培されるものは、茶畑で見かけるように、高さ1mほどに剪定されています。山野などでは7〜8mほどになっているものもあるようです。
花は直径2〜3cmほどの白い花で中央には黄色い葯がたくさんつき、ツバキの花を小さくしたようで、ツバキの仲間であることがうかがえます。花の時期は、ツバキよりも一足早く、晩秋から初冬にかけて咲きます。果実は直径1.5〜2cmほどと小さく、球形で熟すと果皮が割れて種子が出てきます。種子は薄い茶褐色で、1.5cm前後の球形をしています。

緑茶とウーロン茶、紅茶の違いは茶葉の製法の違いで、発酵の度合いなどによる違いによります。緑茶は無発酵、ウーロン茶は半発酵、紅茶は完全発酵させたものです。ちなみに中国茶の種類はとても多く、様々な製法があるようです。日本では、早春から5月、いわゆる八十八夜の頃とその前後に摘まれるのが一番茶、6〜7月は二番茶、その後、摘み取る時期によって三番茶、四番茶、秋冬番茶、冬春番茶と呼び、期間が細かく区分されています。かつては何度も茶摘みがされていたそうですが、現在は二番茶までの場合が多いようです。新茶とは一番茶のことで、最も美味しいとされています。


フラーレンコーン
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【フラーレンコーン】
 
No.30+1 (難易度:2
 

名称:モミジバフウ
別名/俗称/和名:アメリカフウ、フラーレンコーン
英語:American Sweetgum 
学名:Liquidambar styraciflua
分類:マンサク科 フウ属  
産地/分布:北アメリカ中南部・中央アメリカ原産で、大正時代に渡来

モミジバフウの実から、種子やとげのような組織を取り除いたあとに残る組織体のことをNGでは「フラーレンコーン」と呼んでいます。

北アメリカ中南部・中央アメリカ原産の落葉高木で、大正時代に渡来し、街路樹や公園樹として多く植栽されています。原産地では高さ40〜50mの高木ですが、日本では剪定を繰り返すため、高さ5〜10mぐらいのものが多いようです。モミジバフウ(紅葉葉楓)という名前は、葉が掌状(しょうじょう)に5〜7裂し、もみじに似た形をしていることに由来します。また、秋には、葉が橙色から赤に見事に紅葉します。葉の形だけではなく、この美しい紅葉の色もモミジの名にぴったりです。

このモミジバフウの実は、種子やとげのような尖った部分が取れたあとに残った形状が、「フラーレン」(C60フラーレン)と呼ばれる炭素原子60個で構成されるサッカーボール状の構造と同じ形状をしています。幾何学的には「切頭二十面体」とよばれ、12個の正五角形と20個の正六角形からなり、頂点の数は60個になっています。この形は非常に安定的な構造で、自然界にも多く存在し、宇宙で最初にできた物質の形と考えられているそうです。
大きなものでは子供の拳大の大きさにもなる印象的なこの実は、まさに自然のつくり出す造形美そのものと言えます。

 

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